第4章 月を捕まえる(月島蛍)
綺麗な男だよね。
背は高いし、無駄にムキムキした筋肉はないし。
バレーボールやってる男子って皆こんな感じなのかな。
月島観察をしている内に授業が終わった。
あ、ノートとってない。
黒板消され始めてるよ、どうしよう。
「自業自得デショ。」
慌ててノートに書き込もうとしても間に合う訳なんかなく、落ち込んで額に手を当てていると上から声が降ってきた。
声の方向を見上げると月島が鼻で笑っている。
「月島…くん。ノート見せて下さい。」
向こうから話し掛けてくれた。
お近づきのチャンスだと思って頼み事をしてみる。
「嫌、って言うに決まってるよね?」
「デスヨネ。」
この人がクラスメイトに親切にしている所なんて見た事もないし。
思っても絶対に口には出せないけど。
それより、授業内容聞いてなかった方が問題なんだよ。
テスト落としたらどうしよ。
進学クラスなのに赤点とか勘弁してよ、もう。
頭を抱えて悩んでいると、目の前に閉じられたノートが降りてきた。
それの持ち主はノートを主張するようにヒラヒラと揺らしている。
「僕の質問に答えられたら、ご褒美に貸してあげてもいいケド?」
今まで見たこともないような極上の笑顔で月島が笑っていた。