第3章 カテキョの代金‐ハイキュー!!冬休み企画!‐
机に向かって数分。
早くも、視線が気になって仕方がない。
「…鉄朗さんや」
「なんですか、ちゃこさんや」
年寄り臭い喋りで声を掛けると、それに合わせた返答がある。
「あんまり、こっち見るのやめて頂けませんかね?」
「嫌に決まってんだろ。机に向かって必死こいてる姿、珍しいからな」
ふざけている場合じゃないから要求をしてみたけど、どうやら飲んで貰えないらしい。
喉をクックッと鳴らして笑う姿から、面白がられている事まで判明。
相手なんかしてられないから無視をする事にして、参考書に目を向けた。
文章を読んでいても、どうしても後ろが気になる。
集中なんか出来やしない。
そうやって、気にしているからこそ、聞き逃さなかった音。
ゆっくり、静かに、近付いてきている。
真後ろに立たれると、机の上に影が落ちた。
「邪魔しない、で?」
私の肩口から机上を覗くようにされて、抗議しようとした声が上擦る。
顔が近すぎて、それ以上は声が出せなくなった。
鉄朗は、そんなのを気にした様子なんか無く、ノートに指先を滑らせる。
そして…。
「ここ、公式間違ってんぜ?」
まさかの指摘。
さっきまで居た筈の位置からじゃ、見えるわけないのに。
なんで、私が間違えたと分かったんだろう。
疑問を口には出せず、鉄朗に視線を移すと目が合った。
「ちゃこ、文章題苦手だろ。やけに長く参考書眺めてっから、な。どうせ分かんねぇ問題無理に解こうとして躓いてんじゃねぇかと」
ニッと口角を上げて笑う顔は、バカにしてるのか、心配してくれたのか、分からない。
でも、それだけ私を気にして見ていてくれた事と、苦手分野なんかを覚えていてくれた事は、素直に嬉しかった。