第2章 後編
「いつもすみませんねぇ、この子ったら身体が弱くて」
目の前にいるのは、熱を出して風邪を引いている子供。
ローは慣れた手つきで診察をしていった。
「今の時期は仕方ねぇよ。大したことねぇから帰ったらちゃんと安静にしてろ」
そう言ってローは子供の頭を乱暴に撫でてやると、子供は嬉しそうに笑っていた。
あの後、ローは流れ着いた島でそのまま町医者として働くことになった。
丁度医者が不足しているようだったので、行く宛ても目的もないローは取り合えずその申し出を引き受けることにしたのだ。
まさかこんな形で夢が叶うことになるとは、思っていなかった。
それから数日後
トラファルガー・ロー 階級 中将 殉職
その記事がローの目に入った。
どうやらローは死んだと思われているらしい。
それもそうだ。死ななかったらなんの為の処刑台だ。
あそこから海に落ちて生きていた奴など、1人もいない。
幸いここの住民はローのことを知らないのか、知ってても医者として認めてくれているので黙ってくれてるのか、何か言ってくる人はいなかった。
だからローは気が済むまで、ここで過ごそうと思うことにしたのだ。
ふと窓から外を見れば夕日が漏れていた。
先ほどの子供で患者は最後なので、今日はもう終わりにすることにした。
後片付けをして白衣を脱ぎ、帰る準備をする。
今住んでいる家はここからそう離れていない。
町の人が用意してくれた診療所も、家も、中々綺麗なものだった。
更にはまったく関係ない人が、差し入れとか持ってくる日もあった。
最初は怪しんでいたローも、今ではありがたく貰っている。
そんな気さくな住民が多いこの島を、ローは意外と気に入っていた。
だから彼は、そんな住人に応えるために医者としての務めを果たすことにしたのだ。