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幻影の花唄【ONE PIECE 】

第2章 後編



真っ白い空間に1つだけ置かれていたベンチ。

ユーリとローはそこに座っていた。

繋がれた手、絡み合う視線。

2人は長い間、色々なことを話していた。
家族、仲間、夢、好きなこと、嫌いなこと。
海軍を恨んでいたこと、海賊を恨んでいたこと。

生きている時には話せなかったことを、二人は夢中になって話していた。

ユーリを追ってローも海に飛び込んだ後、海軍が助けてくれたようだが、それはユーリのおかげだった。

彼女が近くにいた海王類に頼んで、ローを海面まで引き上げさせたのだ。
それならユーリは生きているのかと慌てて聞いてみるも、彼女は悲しそうに笑うだけだった。

「私、今まで人を好きなったことなかったんだ」

粗方話がひと段落すると、ユーリはふと物思いに耽るように話し始めた。

「人を好きになって、相手も同じ思いを返してくれるってこんなに幸せなことなんだね」

「…あぁ」

「……ありがとう、ロー。あなたと出会えて、本当に良かった」

ユーリは本当に幸せそうに微笑んだ。
ローも同じように笑みを返し、そっと彼女を抱きしめる。

「あぁ、おれも…ユーリと出会えて良かった」

抱きしめていた彼女から淡い光が漏れていく。

きっともう、残された時間はないのだろう。

「ローの夢、叶うといいね。私応援してるから」

ユーリはローを抱きしめている手に力を込めた。

「辛いこと、悲しいこと、色々あるかもしれないけど…生きていたら絶対良いことはあるから」

ね?だからほら、笑って。

ユーリは自分の髪に付けられていた髪飾りを取ると、そっとローに渡した。

そしてそのまま、彼を引き寄せて口づけを送る。

「じゃぁ、私は行くね。これ以上目の下の隈を濃ゆくしたらだめだよ!」

「…ッユーリ!」

口付けが終ると、ユーリはゆっくりと目を閉じた。

ローは慌ててユーリを捕まえようと、抱きしめてる手に力を込める。









だけど、彼女の姿は綺麗な光となって、宙を舞っていった。




残されたのは、ローの手元にある赤い髪飾りだけだった。



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