第2章 後編
診療所の鍵を閉めて帰り道を歩いていると、携帯型の電伝虫が鳴った。
「久しぶりだな、ロー。元気にしているか?」
電話の相手がコラソンだと分かると、ローは受話器を取った。
あの海軍本部でビブルカードを唯一渡していた人物。
コラソンだけは、ローが生きていることを知っていた。
だから偶にこうして電話してくる日があるのだ。
「毎日相変わらずだ。特に今の時期はウイルスが多いからな」
「ははっ、そりゃお前の仕事だから頑張れよ」
「言われなくてもちゃんとやってるさ」
ローの穏やかな声を聞いて、コラソンは少し安堵の息を漏らした。
一時期はどうなるかと思っていたが、彼は無事に回復してくれているようだ。
あのロボットには悪いことをしてしまったが、本当に感謝をしていた。
あれからロボットはどうなったかは聞いてない。
何となく聞きづらい気持ちがあったのだ。
だから、ローから話さない限り聞かないでおくことにしたのだ。
「あぁ、そうだ」
コラソンがローの話を聞きながら物思いに耽っていると、何かを思い出したように彼が言葉を発した。
「最近、コーヒーが旨いんだ」
何の話かと思えば、ただの世間話だった。
彼はコーヒが好きだっただろうか?
コラソンは過去の記憶を辿りながら首を傾げていた。
「だから、何かおすすめがあれば教えてくれ」
「…分かった、色々探してみるよ。疲れている時はコーヒー飲むと落ち着くだろ」
ローの言葉にコラソンはこれ以上考えるのをやめた。
彼とて特に深い意味はないのだろう。
コラソンはさっそくおすすめのコーヒー一覧を、頭の中で思い浮かべていた。
そして近々コーヒーをそちらに送ると言って、その日の会話は終了した。