第1章 前編
次の日、ローが目を覚ますとまだ外は薄暗かった。
時計を見れば朝5時。
昨日寝たのが2時だとすると、これでもよく寝れたほうかもしれない。
ソファーでそのまま眠っていた為、痛む体に眉をひそめながら起き上がる。
時間的にはまだ早いが、取り合えずシャワーを浴びて、部屋を出る準備をする。
今日は面倒なことに、月一で行われる定例会議があるので、色々とやることがあった。
午前中を通して行われるその会議の必要性は、一体どこにあるのだろうか。
どうせ下らないじじぃ共の、どうでもいい話が続くのだろう。
ローはうんざりとした表情で髭を剃っていると、鏡に映った自分の顔が視界に入った。
その顔色の酷さに、思わず自称気味に笑う。
目の下の隈なんて日に日に濃ゆくなっていくばかりだ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
ローは顔を洗い終わると着替えるために移動した。
机の上に放り投げたままの書類に手を付けられるのは、早くても昼過ぎからだろうか。
そんなこと考えながら服を手に取った時、ふと部屋をノックする音が聞こえた。
時間帯はまだ朝6時。
こんな時間帯に訪れてくる人など、今までいなかった。
ローは白いコートを羽織ると、無言でその扉を睨んだ。
扉の向こうから殺気は感じられないが、どう考えても怪しすぎる。
「すいません、あけてください」
ローが突然の訪問者の対応に頭を悩ませていると、不意に女の声が聞こえてきた。
ノックの音は未だに鳴り響いている。心なしか、だんだん叩く音が強くなっている気もする。
こいつは中に誰もいない可能性を考えてないのか?
ローが考え込んでいると、再び開けてくださいと言われた言葉。
深夜に抱いて欲しいと言って訪ねてくる女はいたが、何度も言うように今は早朝の時間帯。
ローの眉間に刻まれていたシワがどんどん深くなっていった。
「……はぁ」
そして悩むこと数分、一向に引かない彼女に痺れを切らすと、ローは扉に手をかけた。