第1章 前編
次の日の朝、船に舞い降りてきた新聞を見て、ユーリはため息を吐いた。
懸賞金5億ベリー
一気に5倍に跳ね上がったその金額を、凄いと褒めるクルーもいれば心配の声を上げるクルーもいた。
記事に小さく書かれてる、ユーリを本格的に捕らえようとしている海軍の文章。
ユーリは皆の前に立つと、今後の話をした。
「何があってもあなた達は私が守ります。これから先、多くの面倒ごとに巻き込まれるのは明白。この船を降りるのは何時でも自由です。ただ残った以上、もし私が捕まったとしても一切の手助けは不要です。その時を持って、この海賊団は解散します。これは船長命令としてあなた達に伝えます」
凛としたその声に、クルー達は静まり返った。
普段ぼんやりとしている彼女が放ったこの言葉を、今でも忘れないと、生き延びたクルー達は言っていた。
もちろん反論するクルーもいたが、その者には船を降りなさいとバッサリ彼女は切り捨てていた。
そんなことを言われれば、従うしかない。
クルー達は皆、船長を心配していたが、彼女はそれだけ言うと何時もの調子に戻ってしまった。
腹が減ったとキッチンヘ消えていく彼女の背に背負っていたものは、どれだけ重いものだったのだろうか。
その背負っているものを、少しでもいいから分けてほしかった。
そしてその日以降、長きに渡って海軍との戦いが続いたが、誰一人ユーリの元を離れるクルーはいなかった。
その事実に、ユーリは最後まで彼らに感謝をしていた。