第2章 後編
「うっ…ぁあああ!?」
ローは頭を抱えて暴れた。それをしっかりと抱きとめている彼女。
ローの視界に映るものが、どんどん変わっていく。
綺麗に保たれていた部屋は、廃墟と化した。
ボロボロの壁、家具、天井。
そう、インペルダウンはユーリの力により廃墟と化していたのだ。
その状態は今も変わらない。
辛うじて生活できるレベルだが、原状回復するには膨大な時間がかかる。
だから好き好んでこの場に止まる人物など、ロー以外いなかった。
ローはユーリが海へ飛び降りた時、気づけば後を追っていた。
だけど能力者の彼では彼女を助けれなかった。
海の底へ沈んでいく彼女。
次第に遠のいていく意識。
そしてローが彼女の手を掴もうとした瞬間、意識を手放した。
その後、彼は海軍によって奇跡的に助けられたが意識不明の重体。
一か月間眠りに付いていたのだ。
もちろんユーリがどうなったのかは分からない。
だけど、絶望的な状況なのは変わりないだろう。
そして一か月後、眠りから覚ました彼は、どこか様子がおかしかった。
廃墟と化したインペルダウンへ戻り、そこで以前と同じように生活を送っている。
ユーリが死んだのは認識しているようだが、彼はまるで捕らわれているようにそこから動かなかった。
コラソンやつる中将が、何度も連れ戻そうとしたが無駄だった。
まるで幻覚を見ているように動く彼。
彼は自分がユーリを殺したと思っていた。
そして碌に食事も取らない彼に、本格的に危機感を覚えた二人はケアロボットに託すことにしたのだ。
あの脱獄事件の主犯はユーリではないと気づいていた。
囚人リストに書いてある悪魔の実の能力を調べればすぐに分かった。
もちろん、ユーリを殺すように命令したのは二人ではないのだが、自分を責め続けるローを見ていられなかった。
だからせめて、彼が正気に戻ってくれるのを願いロボットを連れてきたのだ。
これは一種の賭けだったが、食事を取り始めたとロボットから伝えられた時は、本当に良かったと安堵していた。