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幻影の花唄【ONE PIECE 】

第2章 後編



ユーリはローの部屋に戻ると、ゆっくりと彼に近づいた。

コラソンの話を聞く限りでは、残された時間は1時間もないかもしれない。

眠るローを上から見下ろす彼女の瞳は、相変わらず闇の色をしていた。
手元のナイフが、僅かに光る。

思えば、この寝室で彼と一緒に寝ている時は、私も心が安らいだような感覚がした。
本当は、もっと彼と一緒にいたかった。


…だけど、もう終わりですね。









ガッ!

ユーリは彼の上に一瞬で馬乗りすると、その首にナイフをつきつけた。

当然、ローは目を覚ます。

お互い見つめ合う視線が、ゆっくりと交わっていく。
首元に突き付けられたナイフに、ローが驚いたような表情はない。
ユーリはそんな彼を鼻で笑った。

「久しぶりだというのに、随分と余裕な表情じゃない?」

ユーリの言葉に、ここに来て初めて彼の瞳が揺れたようなきがした。

「私が死んだとでも思っていたの?言ってなかったけど、私は海王類と話が出来るのよ?それに、あの日はエースも脱獄できたみたいだしね」

そこまで言えば、何が言いたいのか分るでしょう?
口の端を吊り上げて笑う彼女は、もはや今までとは別人だった。

いや、これが本物なのか?

ローは未だに無言のまま彼女を見つめている。
そんな彼にユーリは舌打ちをすると、さらにナイフを突きつける。

ローの首から、一筋の血が流れていった。











「……そうか」

そしてお互い無言の睨み合いが続いてどれくらい経ったのだろうか。

ローが声を出して笑い始めた。

「おれを殺しに来たんだろう?いいぜ、好きなようにしろよ」

能力を使えば、この状況なんてすぐに逆転できるのに、彼はそれをしなかった。

まるで抵抗を見せない彼は、早くしろとばかりに挑発するように視線を送る。















そう、これが彼の望みだった。










ユーリが生きていて、ローを殺しに来る。











ユーリさえ生きていてくれれば、それでよかった。











ローはゆっくりと瞳を閉じた。


その瞬間、何かが頬を伝う感覚がした。

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