第2章 後編
それから数日後。
ユーリは再びローがうなされていたので、何時ものように髪を撫でていた。
そして暫くすると、彼が目を覚ます。
何時もはそのまますぐに起き上がって何事もなく仕事に戻るのだが、今日は少しだけ違った。
茫然とした表情でユーリを見上げているロー。
ユーリはそんな彼をじっと見つめていた。
「…おまえは、ねぇのか。望み」
そしてどれくらい時間が経っただろうか。
ローがぼんやりとした表情で、聞いていた。
「私の望みは、あなたが癒されることです」
「そうじゃねぇ。俺以外での話だ。こんなところから出て行きたいとは思わねぇのか?」
ローの言葉に不思議そうにする彼女。
それもそうだ、ロボットに感情があるはがない。
どんなに邪険に扱われようが、彼女が傷つくことはない。
ただ、与えられた使命を果たすためにここにいるだけだ。
なぜその質問を彼女にしたのかは分からない。
ローは声を殺して笑った。
このロボットと一緒に過ごし始めてとうとう頭がいかれ始めたのか。
いや、そもそも最初からおかしかったのかもしれない。
「出て行きたいと思ったことはありません」
予想通り、彼女から発せられるその回答。
ローは自分自身の考えに馬鹿らしくなり、この会話を終了させることにした。
「だけど、ここ最近…私でも分からないことがあります」
ローが起き上がろうとすると、それは彼女の手によって引き留められた。
相変わらず膝の上に乗せられた頭を撫でている彼女。
その瞳は、静かにローを見ていた。
「上手く言えませんが、あなたには幸せになって欲しいと感じています」
ローからどんな態度を取られようと、彼女がローに尽くそうという気持ちは最初から変わらない。
そしてその気持ちの更に先にある、また別の何かが生まれてきている。
それが何なのか、まだ彼女は理解できないでいた。