第2章 後編
ユーリが地下6階に一瞬で移動すると、エースはまだそこにいた。
そこにいたのだが、丁度どこかへ連れていかれようとしていた。
「な、なんだおまえは…!?」
ユーリが突然現れたことにより、海兵が慌てたように声を荒げた。
だが、彼らはその状態のまま動かなくなった。
ユーリが能力を発動し、時を止めたのだ。
「おいおい、何で戻ってきたんだ?」
驚いたのは海兵だけではなかった。
海兵のポケットから鍵を取り出し、エースの海楼石を外すユーリを信じられないと言った表情で見ているエース。
「私もどさくさに紛れて逃げることにしました。その為には、檻を破壊して逃げたと思わせないと。…あ、エースはついでに様子見に来ただけです」
ユーリは不敵な笑みを浮かべてそう言うと、檻を破壊した。
本当は昨日のことが恥ずかしくて、白を切ってそんな言い方になってしまったのだが。
そんなユーリの言葉に、エースは声をあげて笑った。
「俺はついで扱いかよ。昨日はとんだ…」
「ああああ!!私はまだやることがあるのでもう行きますね!お互い生きてれば何処かでまた会いましょう!!」
折角何事もなく接しようとしてたのに、掘り返そうとしてくる彼。ユーリは慌てて彼の言葉を遮り、能力を発動させた。
本当はもう少しゆっくり話したかったが、昨日のこともあるし、時間も余りないので仕方ない。
ユーリは一瞬でその場から消え去った。
消える瞬間に、昨日は本当にすいませんでした、是非記憶から抹消してくれという言葉を残して。
エースは暫く唖然としていたが、声を殺して笑った。
忘れてくれと言われても、そう簡単に忘れれるものでもないだろう。
それくらい、彼女の存在はエースの中で印象深く残ってしまった。
「…さてと、俺もそろそろ行きますか」
騒ぎの声が大きくなっていく。
ここで悠長にしている時間はなさそうだ。
次会った時は、仲間にでも誘ってみるか。
ここから逃げるという事は、あの男とは縁を切るつもりなのだろう。
エースは口元に笑みを浮かべると、能力を発動させその場から立ち去った。