第2章 後編
ユーリが目を覚ますと、夕方だった。
痛む体を起こして辺りを見渡すと、知らない部屋だった。
ローの姿を探すもどこにも見当たらない。
「…?」
ユーリがぼんやりと辺りを見渡していると、サイドテーブルにメモが置いてあるのを見つけた。
ーー厄介な海賊が侵入してきた お前はこの部屋から絶対に出るな
殴り書きされたその文章に、なんとなく苛立ちと焦りが伝わってきた。
確かに耳を済ませば、微かに騒ぎのような音が響いてくる。
ユーリはメモを置くと、どうするべきか頭を悩ませた。
(…エースは無事だろうか)
昨夜はとんだ面倒ごとに巻き込んでしまい、申し訳なかった。
彼のことだから気にするなとは言ってくれそうだが。
(…もしかしたら、この騒ぎに便乗して逃げた方がいいのか?)
ユーリはシーツを身体に巻き付けると、ゆっくりと部屋の中を散策した。
そして見つけた衣類を勝手に拝借し、身に纏う。
微かに残っているローの香りに、やはりここはローの部屋で間違いないようだ。
ユーリは締め付けられる心に蓋をすると、刀を召喚した。
(逃がそうとするほど、ローは私の処刑を望んでいない。でも、首輪というハンデがありながら取り逃がしたとなると、ローに責任を問われる)
ユーリは軽く息を吐き出すと、能力を発動させた。
(だから私は、この騒ぎに便乗して逃げる。私がいた檻を壊しておけば、誰かが逃がしたと思うだろう。それに海賊の対応に追われているローは、そこまで責任は問われないはずだ)
次元が歪むと、ユーリはその場から姿を消した。
向かう先は地下6階、あの牢獄だ。
檻を壊す必要もあるが、エースがどうなったのか気になった。
まだ捕らわれているようであるなら、逃がしてあげたい。
彼が捕まった理由に、私は納得ができなかった。
それに迷惑を掛けてしまった。
だから、もしまだあそこにいるのなら助けたいと思ったのだ。