第2章 後編
ユーリが息を整える間もなく、身体は勝手に動き始める。
震える足に力を入れると、ローの首の後ろへ手を回す。
そして屈みこんだままのローに口づけを送り、舌を差し出した。
それに応えるようにローが舌を絡めると、卑猥な音が鳴り響く。
「んっ…っは…」
激しい口づけに、彼女の息があがったろことで解放してやる。
目の前で、熱に浮かされたような表情を浮かべるユーリ。
そしてその視線は、ゆっくりとローへ向けられた。
「…っ」
ユーリはローと目が合うと、卑しく笑った。
その笑みに、ローはゾクリとしたものを感じた。
あぁ、もういい。これ以上、他の男にユーリを見せるな。
嫉妬と独占欲から招いた今回の出来事。
完全なる自業自得だが、後悔という名の言葉が頭を過り、ローは思わず舌打ちをした。
ガシャンと、ユーリの手錠が外される音がする。
ローはユーリを抱きかかえコートで覆うと、視線を逸らしたままのエースを睨みつけた。
「こいつと逃げることを、おれが許すとでも思うのか?どうせてめぇは明日処刑される。これ以上、ユーリに余計なことを吹き込むんじゃねぇよ」
ローはそれだけ言うと、ROOMを発動させてその場から消え去った。
消える瞬間に見えたユーリの表情は、どこか幸せそうに見えた。
それが彼女の本心なのか、違う何かなのかは分からない。
分かるとすれば、あの男の持つ異様なまでの執着心だけだろうか。
「…はぁ。とんでもねぇ奴がいたもんだな」
再び静まり返った独房で、エースはそう毒づいた。
ユーリがどうなったか心配だが、捕らわれている彼にはどうすることもできない。
少なくともあの男からはユーリに対する殺意を感じなかったので、今はそれを信じるしかないだろう。
エースは再びため息を吐くと、明日処刑される現実を、どこか他人事のように受け入れていた。