第2章 後編
「お前ら二人の関係は知らねぇよ。ただ、ユーリが怯えてるのは分かる。てめぇの女だと言ったが、どうせ無理矢理…」
エースの言葉を遮るように、再び聞こえてきた風を斬る音。
今度は頬だけではなく、全身を斬りつけられた。
彼の口からは、微かに唸るような声が漏れる。
「止めて!!」
その様子を見て、咄嗟にユーリ手がローのコートを掴む。
彼女のその行動が、余計に彼の怒りを買うことになったとしても、止めずにはいられなかった。
再びユーリへと視線を戻す彼。
その冷えた瞳に、ユーリは思わず掴んでいたコートを離した。
そんな彼女の様子にローは目を細めると、口元を吊り上げて笑った。
「無理矢理かどうかは、その目で確かめてみたらどうだ?」
そう思うだろう?ユーリ。
彼の言葉に、ユーリは目を見開いた。
鬼哭が地面に落とされ、音が鳴り響く。
ローはユーリに覆いかぶさるように座ると、ゆっくりとその頬を撫でた。
「…お前から、おれを犯してみろよ」
言葉と共にユーリの名前を呼ばれる。
その言葉は、首輪に付けられた彼女に、命令として伝わっていった。
「…ぁっ」
ユーリの手がゆっくりとローの背に回される。
目の前には、恐ろしく整った顔の男が、嗜虐的な笑みを浮かべていた。
彼の肩越しに見える、驚いたようなエースの表情。
この首輪のことは、一度彼から聞かれたことがあったが、結局伝えなかった。
これ以上、余計な心配を掛けたくなかったのだ。
「エース、これは…」
「余計なことは喋るな」
ユーリが弁解の言葉を口にしようとした瞬間、新たにされた命令が彼女を縛る。
ユーリの口からは、もう言葉は出てこなかった。