• テキストサイズ

幻影の花唄【ONE PIECE 】

第2章 後編



ローはやはりユーリを逃がそうと思い、再びこの場を訪れていた。
彼女の処刑日は、2日後に決まっていたのだ。
エースは明日処刑される。
マリンフォードで処刑されるエースと、インペルダウンでローから処刑されるユーリ。

ローはあの後ずっと頭を悩ませていたのだが、もう迷っている時間はなかった。

次は命令してでもこの監獄から遠ざける。

そう思って来たはずだった。



牢獄に足を踏み入れると、微かに聞こえてきた二人の会話。
ローは思わず足を止め、その会話を聞いてしまった。

ユーリが、エースと共に逃げようとしてるともとれる会話。

ローの提案は断ったくせに、会って間もない男について行こうとするユーリ。

その現実は、ローを再び狂気へと突き落としていった。







ローは檻の鍵を開けると、ゆっくりと中に足を踏み入れる。

その様子をどこか怯えたような表情で見ているユーリ。

ローの手には、まだ鬼哭が持たれていた。


ガッ!

牢内で響き渡る鈍い音。

壁に背を向けてこちらを見ているユーリの、喉元スレスレに突き刺された鬼哭。

彼女が僅かに息を呑んだのが分かった。


「ユーリから離れろ!!何がしてぇんだよ、てめぇは!!」

エースは再び声を張り上げて目の前の男を睨む。

どう考えても普通じゃないそのやり取りに、エースは舌打ちをした。
2人の関係が何なのか分からないが、ユーリが怯えているのは離れてても分かる。

このままだとユーリは殺される。

そう思ったエースは手錠を外そうと必死にもがいていた。



「何がしてぇ、だと?」

エースの言葉に、クツクツと笑い声を漏らしながら彼は振り返った。

「おれの女に何をしようが、おれの勝手だろ?」

残忍な笑みを顔に張り付けてる彼に、エースは思わず息を呑む。
数多く修羅場を乗り越えてきた彼には分ってしまった。

今目の前にいるこの男がもつ狂気が、どれほど危険なのかを。

それは今、彼女へと向けられていた。




/ 89ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp