第2章 後編
ローがユーリに近づくと、彼女は雑貨を見ているというよりは、ただ茫然と立ち尽くしているようだった。
そんな彼女の不自然な様子に、ローの表情も怪訝なものに変わる。
「…お疲れさまでした。任務は終わったのですか?」
ローが暫く彼女の動向を見ていると、そんなローに気づいたのか彼女は振り返った。
向けられる瞳。
相変わらず光の灯ってないその瞳に、ローは思わず視線を逸らし何をしているのか問いただした。
「折角なので街を見ておこうと思って歩いていたんです。すると綺麗な音楽が聞こえたので、思わず聞き入っていました」
彼女の言葉に、ローは始めてこの店で流れている音楽に気づいた。
音楽というよりも何かの歌のようなその曲は、この雑貨屋から繰り返し流れている。
ローは音楽など興味もないが、このロボットは違うのだろうか。
ローよりも人間味のあるロボットに、思わず彼は苦笑してしまった。
それを不思議そうな表情で見ている彼女。
「そう言えば、今から何処かへ行かれるのですか?」
そして彼女の言葉にローは本来の目的を思い出し、その場を後にする。
一応彼女には行き先を告げた。
彼女はいってらっしゃいと一言言うと、再びその雑貨屋の中でぼーっとしていた。
ローはそんな彼女に一瞬だけ視線を寄こす。
そしてその際に視界に入った物。
それが何なのか分かると、ローは息を呑んだ。
店の商品として陳列されているその髪飾りは、昔ユーリにあげたものと同じ物だった。
ローは蘇る記憶を消すように頭を振ると、足早にその雑貨屋を後にした。
これ以上、ユーリのことで心を惑わせてほしくなかった。