第1章 前編
ローに与えられた任務は、ユーリの協力を得て実にあっさりと終わった。
インペルダウンへ戻ると、早速ローは本部に呼ばれた。
ユーリは再び牢獄の中だ。
本部へ到着すると、ローの階級は准将へと昇格した。
目の前で賛辞を述べている老人の話を適当に聞きながら、ローはユーリの事を考えていた。
あの日ユーリの力を初めて見たローは、改めて彼女の凄さを知った。
敵の前に立ち、何処からともなく刀を取り出した彼女。
そしてその刀を一振りすると、その場にあった全ての時が止まった。
静まり返った場所の中心で彼女は足を進める。
彼女の目線の先は、ターゲットが所有していた工場。
ユーリはその工場目掛けて再び刀を一振りする。
すると時空が歪み、目の前工場は跡形もなく飲み込まれていった。
ローはその様子を静かに見ていたが、内心は驚きを隠せなかった。
もし彼女を敵に回すことになれば、厄介なことになる。
思わずローはそう思った。
もしローの能力が彼女よりも劣っていたら
もし彼女の首に首輪をつけられていなかったら
きっと、彼女を従わせることは出来なかっただろう。
彼女は平然とした様子でローの元へ向かってくる。
能力を解除した時、無表情だった彼女の表情が僅かに歪んだ気がしたのは、気のせいだろうか。
ローの視線は一瞬彼女を捕らえたが、今は任務遂行が優先だ。
ローは襲いかかってくるクルーを一瞬で闇に葬ると、ターゲットを捕獲した。
彼女が能力を解除したその瞬間、もうすでに彼のROOMは出来上がっていた。