第1章 前編
ユーリが作った最初の料理は、それはそれは酷かった。
味のバランスもめちゃくちゃで、なぜその食材をそこに入れたんだと突っ込みたくなる料理がローの前に並んでいる。
ローは彼女を睨みつけながら、それを口に運ぶ。
だがユーリも察するものがあったのか、すぐにそれは取り上げられた。
そして再びキッチンへ消えて行くユーリ。
ローはそっとため息を吐いた。
去り際に私の船はコックがいて、その人に全て任せていたんだと、言い訳を置き逃げしていった。
言いたいことは分かるが、味見くらいしろと言いたい。
しかし、作ってもらってる以上、何となく不味い等の言葉は出てこなかった。
言わずとも彼女は分かってくれたようだが、これではこの先が思いやられる。
ローはいっそのこと自分で作ったほうがいいのかと、頭を悩ませていた。
だがその後、結局任務が終わるまで彼女は料理を作り続けた。
そのおかげかは分からないが、インペルダウンへ帰る頃には食える状態まで料理が上達していた。
目の前に出された朝食。
卵焼きに味噌汁に焼き魚。
何処の家庭でも作られるその食事が、このテーブルに並ぶまでどれだけの時間がかかったことか。
二人は適当に会話をしながら一緒に食事を取る。
ユーリが料理を作り始めて、いつのまにか自然とそうなっていた。
相変わらず船長だった頃の話を楽しそうにする彼女。
ローは彼女の笑顔をぼんやり見ながら、適当に相槌を打ちながら話を聞く。
なんとなくこの時間が、ローは好きだった。