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幻影の花唄【ONE PIECE 】

第1章 前編



任務を開始して3日後。
2人の間で早速問題が起きた。

それは、まだ目的地にもたどり着いていないのに食料が底をついたことだ。
もちろん犯人はユーリである。

食料といっても調理されたものを指し、食材としての形のものはまだ沢山あった。
ユーリは監獄でまともな食生活を送っていなかったので、ここぞとばかりに食べまくっていたのだ。
そして料理はしたくないので、完成されたものばかりに手を出していた。
その結果がこうなった。

目の前には額に青筋を立てているロー。
それを見て顔を引きつらせているユーリ。

2りは暫くの間にらみ合いを続けていた。

たまにフラッと姿を消すかと思えば、まさか食料庫に入り浸っていたとは。
ローは怒りを通り越して呆れていた。

「てめぇ、この状況をどう責任取るつもりだ」

ローは腕を組みながら食料庫の扉の前に立ちはだかる。
彼女の手に持たれた最後の弁当。
それを青ざめた表情で彼女は口に運んでいた。

この期に及んで食べる手を止めないユーリに、ローの眉間に刻まれたシワが更に深くなる。

「大丈夫、食材は沢山あるから!」

「まさかこのおれに、そのまま食えと言いたいのか?」

「そんなめっそうもありません。どうぞ調理してください」

「・・・ほぉ」

ユーリの言葉に、ローは口角を吊り上げる。
彼の持つ雰囲気が、色を帯びたものに変わった。

「すいません嘘です。私が用意しますのでそれで許してください」

あ、これやばいやつだと思ったユーリはすぐに謝罪した。
ただでさえ夜になれば抱かれるのに、こんな昼間から事に及ばれれば身が持たない。

ユーリの抵抗など、この黒い首輪の前では何の意味もない。彼の命令には逆らえない。
初日からそれを嫌という程実感してしまった。
というかなぜ私を未だに抱くのか分からない。
分からないが、今は我が身が大事だ。

慌てたように食材を幾つか手に持ち、キッチンへ逃げるユーリ。



そんな彼女の後姿を見ながら、ローはそっとため息を吐いたのだった。

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