第1章 前編
ローがユーリの監視役を辞退しよう考えていた時、それを先読みしたかのように次の任務が言い渡された。
「あいつを従わせて海賊狩りだと?」
電伝虫で言い渡された驚くべき内容。
それはユーリの能力を評価して、利用するというものだった。
評価するといってもいずれは処刑される。
つまり、ユーリはただの使い捨ての駒だ。
利用するだけして処刑する、その考えにローは目を細めて電伝虫を睨んでいた。
「従うといっても逃げられても困るからな。そうならないためにある物をそっちに送った。すでに届いているはずだから、上手く活用してくれ」
話をさらに進めてみると、海楼石で作られた特別な首輪をユーリに着けて使えということだった。
海楼石といわれると能力が使えなくなりそうだが、どうも違うらしい。
ここ最近完成したその代物は、着けられた本人を自由に操れる力があり、能力も使える。それができるのは首輪をつけた本人だけだが、趣味の悪い本部の考えにローは眉をひそめた。
「次のターゲットは5億の賞金首だが、使う能力は大したことはない。それよりもそいつが持つ工場を破壊してくれ。後で詳細を送るから、上手く彼女を使え。そうすれば楽に終わるだろう」
その言葉を最後に電話は切られた。
ローは受話器を置くと、ゆっくりため息を吐く。
この話を聞いて、あいつはどう思うだろうか。
再び海が見れることを喜ぶかもしれないが、結局は人殺しに加担することになる。
あいつは海賊でありながら海賊狩りをしていたが、殺しはしてないと言っていた。
恐らく彼女はこの件は拒否をするだろう。
例え拒否しようが、もうどうすることもできないが。
考えても出ない答えにローは軽く頭を振ると、本部から届いている荷物を受け取り地下牢へと足を運んだ。
任務遂行は一週間後、あまり時間は残されていなかった。