第1章 前編
ユーリが投獄されて3ヶ月が過ぎた。
この間、ローと会ったのは数回だけだが、最初に比べれば会話も増えた気がする。
それも、ユーリが持つ根性の強さに感心を持ち、ローが少しだけ気を許したところにあったかもしれない。
「ほら、持って来てやったぞ」
そう言って投げ渡されたのはいくつかの飴玉。
それを檻越しに受け取ると、礼を言って嬉しそうに食べるユーリ。
ユーリがあまりにも煩いもんだから、最近気が向いたら持ってくるようになった。
そんな行動を取っている自分に正直驚いているが、部下が見たらもっと驚くだろう。
だけど、今更止めようとは思わなかった。
ローはそんな自分自身にため息を吐くと、壁に寄りかかり彼女を見ていた。
壁に固定されていた錠は、いつのまにか短い鎖変わり、彼女が自由に動ける範囲が少しだけ増えていた。
それもこれも、飴をくれるのはいいが食べづらいと、彼女が文句を延々と言ってきたからだ。
基本的にユーリに関する権限は全てローに任されている。
だから彼女をどうしようが、彼の自由だった。
一つだけ言い渡された任務があるとすれば、それは彼女が持つ能力の解明だろうか。
ある程度海軍も情報を得ていたようで、ローも捕獲する前に軽く話は聞いていた。
最初は対処出来るのがローしかいないという言葉をあまり信用していなかったが、彼女は本当にROOMの中で無力となった。
そして最近そのことを伝えると、案外すんなりとその事実を認めていた。
同じ空間を操るもの同士で争った結果、ローの方が力関係が上になるのだろう。なんとも悔しそうな目でこちらを見てきたが、これは別にローのせいではない。
因みに彼女にいくつか能力の質問をしたが、これもあっさり教えてくれた。
餌付けに成功したのか、ここから出るのを諦めたのかは分からないが。