第1章 前編
ロボットがローの元へ来てから一週間が経った。
彼女はローがどんな態度を取ろうが、懲りずに毎日やってくる。
そして勝手に部屋に入り、身の回りの世話をしてくる。
ご飯も相変わらず朝昼晩と作り続けているが、未だにローが手をつけたことはない。
彼女は特に気にしてないのか、毎回確認してから一人で二人分を平らげる。
いい加減無駄だから止めろと言ったのだが、都合の悪いことは無視することにしてるのか、まるで人の話を聞かない。
そんなところは彼女に似ているのかと、またユーリのことを考えてしまい慌ててその考えを消す。
ローの気苦労は絶えなかった。
また、一度部屋に鍵を掛けていたこともあったが、つるからスペアを貰ってたのか、勝手に中に入って待っていた。
本人はそのつもりはないかもしれないが、軽くストーカーである。
そして今彼女は勝手に部屋の掃除をしてる。
ローは書類の整理をしているのだが、目の前をウロウロされれば気が散って仕方ない。
何度か部屋を追い出しこともあるが、それでも頃合いをみて彼女は戻ってくる。
ここまでくると、彼女の根気強さにだんだんと折れ始めていた。
二人の間に会話らしい会話は見当たらない。
あるとすれば、それは彼女から振られる話題がほとんどだ。
だが、話を振られてもローが答えることはあまりない。
それでも彼女は、独り言になろうが適当に会話を振ってくる。
最初は仕事の邪魔だと冷たく突き放していた。
そしたら次第に学習したのか、空気を読んで話しかけるようになった。
例えば仕事がひと段落したとき、朝起きたとき、寝る前や休んでいるときに会話をしてくる。
しかしどちらにせよ、1人を好むローからしてみれば邪魔者以外の何者でもない。
どんなタイミングで話しかけられようとも、彼がまともに会話をすることはなかった。
それを彼女が理解しているのかは、よく分からなかった。