第1章 前編
ローが身なりを整えて戻ってくると、彼女は自分の分だけ食べ終わったのか、そのまま椅子に座ってローを待っていた。
「食べないなら、私が食べますよ?」
ローの姿を見ると、わざわざ彼女は確認をとってきた。
ローは眉間にシワを寄せると、勝手にしろと突き放すように伝えた。
そして机に座り書類の整理を始める。
彼女はそんなローの前で、二人分の食事を口に運んでいた。
置かれたテーブルの配置から、嫌でも視界に入ってくる。
ローは無意識に彼女を見ていた。
あんな細身のどこに、あの量が入るか謎だった。
そういえばユーリも結構大食いだった気がする。
いつも監獄の食事の量が少ないと、文句を言っていた彼女。
あのローに対してそんなことを言えるのは、恐らく生涯を通して彼女一人だけだろう。
ローはぼんやりと物思いに耽っていたが、慌ててその考えを消して視線を逸らした。
目の前のロボットのせいで、ここ最近彼女との出来事が蘇ってくる。
ローは書類を手に取ると、目を通し始めた。
これ以上余計なことを考えたくはなかった。
ロボットは早々に食事を平らげたのか、後片付けに向かっている。
その後ろ姿を見て、ローはそっとため息を吐いたのだった。