第1章 前編
ロボットは部屋に入ると、興味深そうに周りを散策していた。
ローは適当に座ってろとそいつに伝え、奥の部屋に消えて行く。
そして程なくして持ってきた軽食。
すぐに用意できるものなど、インスタント系しかない。
しかし用意してやっただけありがたく思えとばかりに、ローは乱雑にそれらを彼女が待っているテーブルに置いた。
それを無言で見ている彼女。
「私は卵スープが好きなのですが」
そう言いつつ、目の前に出された食事をゆっくり食べ始める彼女。その図々しさにローはそっとため息を吐いた。
「さて、私は何をすればいいですか?」
そして出された食事がほとんど彼女の胃に消えた頃だろうか、ふと彼女はそう尋ねてきた。
「別に何もしなくていい、それよりも帰る方法を考えろ」
「生活感があまりない部屋ですね。身の回りの世話でもしましょうか?」
ローの話をまったく聞いてないのか、食事を終えると勝手に部屋を物色し始めるロボット。
海に閉ざされた監獄で与えられた執務室兼自室。
執務室と兼用なので部屋自体は広いものだが、物など仕事で使うもの以外ほとんど置いてない。
冷蔵庫の中は空も同然である。
確かに衣服等を適当にその辺に置いていたかもしれないし、部屋も少し散らかってるかもしれないが、別にこのくらい普通だろう。
「わざわざてめぇに世話されなくても、十分間に合ってる。さっさと出て行く方法を…」
「とりあえず、私は何処で寝泊まりすればいいですか?」
本当にこのロボットはローの言葉が聞こえてないのだろうか、勝手に話を進めて行く。
目の前で青筋を立てている彼が怖くないのだろうか。
彼女は勝手に部屋を物色し終わり、再び椅子に座っていた。
「………知らねぇよ。適当に仮眠室でも借りてろ」
ローはもうこれ以上話しても疲れるだけだと思い色々諦めた。
そしてローの言葉に少し不服そうなロボット。
まさかこいつはここで一緒に寝るつもりだったのか?
冗談じゃないと、ローはため息を吐いた。
何が悲しくてロボットと同じ空間を過ごさないといけないのか。
それが例え、彼女の姿をしていてもだ。
ローは話は終わったとばかりに、再びロボットを部屋から追い出した。
何か言っているようだが、いちいち構ってる暇など彼にはなかった。