第1章 前編
ユーリは能力を発動しようとしたが、それは叶わなかった。
彼女はすでに、ROOMの中に入っていた。
「は?…なんで?」
驚いたような表情をする彼女。
それを怪訝な表情で見ている彼。
だが、どうやら彼の中のタイムリミットは過ぎたのか、ユーリに攻撃を仕掛けてきた。
「…ッ!」
能力を発動できないまま攻撃を受けた彼女は、いとも簡単に捕獲された。
「能力も使わずに、おれに勝てるとでも思ったのか?」
彼女を地面に引き倒し腕を捻りあげる。上からユーリを見下ろしていたローの表情は、納得ができないといったものだった。
「いや、違う。何故か能力が発動しないんだ。ちょっと試しにそっちの能力解除してみてよ」
捕まっているというのに、まだそんなことを言ってくる彼女。
ローは呆れたようにため息を吐くと、拘束した彼女の身柄を海兵に引き渡し海楼石を付けさせた。
確か彼女の能力は、時空を操るものだと聞いていた。
時空とは時や空間等、あらゆる次元を指している。
わざわざローが派遣されるくらいだから、それなりの苦戦を考えていたが、彼女は能力1つ発動することなく捕まった。
海楼石をつけるまでROOMは絶対に解除するなと言われたが、それが何か関係しているのだろうか。
何やら騒ぎながら連れていかれる彼女。
そんな彼女の能力の特徴、そして弱点を知ったのは、インペルダウンに投獄されて少し経った後だった。