第1章 前編
長い定例会議が終ってローが部屋の前に戻ってくると、まだそのロボットは扉の前にいた。
膝を抱えてぼーっとしているそいつは、ローの姿を見つけると立ち上がった。
「契約者に確認したところ、拒否されました。よって私はまだ帰れません」
相変わらず淡々とした表情で告げてくるそいつに、ローの眉間のシワも深くなる。
「…ッチ。書類を貸せ」
ローはさっさと終わらせるために、そのロボットに書類を渡せと手を差し出す。
その差し出された手を見て、ロボットはゆっくりと首を振った。
「その書類はつるさんに渡しました。必要があればつるさんに確認してください」
ロボットのその言葉に、差し出されていた手がピクリと動く。
彼は手を下ろしロボットを睨みつけるが、相も変わらずじっとローを見つめてくるだけだ。
「あぁそうかよ。じゃぁその内書類を書いて送るからお前はもう帰れ」
ローはそれだけ言うと、扉を閉めて部屋へと入っていった。
本当は鍵を掛けたいところだが、この部屋を訪れる者も少なくない。
ローはため息を吐くと、溜まっている書類を片付けるべく机に向かった。