第5章 番外編
本当は人から貰ったこの香水をつけ始めたら呪われるらしい。標的にこの香水を贈り、着けさせる事で呪い殺すのだけども、俺の場合無理矢理ぶっかけられてるからいまいち
呪いの方は不完全に掛かってるみたいだなコレ。
「呪詛返し効くかなこりゃ」
『何か作戦あるの?』
「日本には呪いを跳ね返す呪いもあるんだよ」
『…何でもアリだね。本当』
濡れ鼠になった服を乾かしながら。持っていた香水の残った瓶の中身を確認していると
リドはそれを取って仕返しするんでしょ、と不機嫌顔で。
ふと、何かの気配を感じて2人で振り向くと先程見た黒い犬が俺の顔を見つめながら近寄って来るが、もう唸りながらではない。
臭いが消えて少々戸惑ってるみたいだけどこんなシロモノをリドはどうやって作ったんだか。
「おいでわんころ」
「グルル…」
「お前に本当の獲物を教えてあげる」
真っ黒い犬の頭を優しく撫でてやれば、嬉しそうに目を瞑る様子に笑みが零れる。
『昭久くらいだよね、グリム見ても影響無い人間』
「多分親父と母さんも効かんわ」
『わかる』
その夜。
ノクターンの片隅で恐怖に顔を歪ませ、全身を動物に噛まれた老婆の死体が見つかったと日刊預言者新聞の片隅で小さく報じられた。