第5章 番外編
2017ホラー企画:安倍昭久
ホグワーツの夏休みが始まって直ぐの事だった。珍しく真剣な親父にセブ共々呼び出されて本堂に入った瞬間。
妙な感覚に顔を顰める。何だ?そこに何が居る?
遅れてやってきたリドが何やってるのと背中を叩いて来たが直ぐに赤い目を見開いて俺と同じ方向に視線を向けた。
2人で見つめる先には困った顔の壮年の夫婦と、その背後には顔を黒い布で覆った人間が1人。いや、気配がおかしい。人間か?
此方を向いてる様に見えるが、彼…いや彼女の背後で何かが蠢いているのをじっと見つめていると、親父はそこで見て居ろと俺達3人を座らせる。
「安倍様、こちらは、」
「ああ、俺の息子達だ。もしもの時に手伝わせる」
「そうですか」
そう言葉を零すのは父親であろうか、妙に生気が無く夫婦揃って弱々しい。という事は後ろに居る者は娘か。
親父が娘に駆けられてる布を取り払うと娘の全貌が明らかになりセブとリドは息を止める
本来項のある部分が無く、切れ目が開いたと思ったら。そこは歯が並んでだらりと涎を垂らして開く。
まるで口の様に蠢くソレはカチカチと歯を鳴らしたと思ったら、本体である娘の手を使い傍に置いてあった食事を項の口に放り込みがつがつと食らい始めた。
『これは面妖な』
『昭久、これ何だかわかる?』
『実際見るのは初めてかも、ええっと、何だっけな。対処法しか思い出せない』
俺の言葉に親父は顔を上げ、分かるのか?と問うてくるので頷けば親御さん2人が俺の足に縋ってお助け下さいとすすり泣く。肩をポンと叩いてコレはいつから?と聞けばほんの数日前
3人で旅行中のこと、あちこち観光をしていてその日は旅行先で宿泊してのんびりと寛いて居た。旅行も終盤で次の日には帰宅する
今まで巡って来たところの思い出を語らいで居れば娘が突然苦しみ出したかと思った瞬間に項が裂けた。