第5章 番外編
「んじゃ兄ちゃん。封印解いてやるよ」
『待って下さい!私は何かを仕出かしてここに封印されてたのでは?』
『もういいんだ、昭久様と供に。今度はお前の幸せを探しに行きなさい』
社の中で意識を集中して、この兄ちゃんの封印されてる本体を探ると
「これか・・・」
血の様に真っ赤な小箱が、封印の札を何枚も貼られて埃を被っていた。
恐らく、これを開くと封印が解ける。
「長、これで合ってる?」
『もう見つけられたのですか』
『あ、あの!』
「ん?」
綺麗な顔を歪めた天狗の兄ちゃんが、言いづらそうに
『私は何の罪で・・・封印を』
記憶が無いのが不安なのか、恐る恐る聞く兄ちゃんに長が笑って頭を撫でる
『昭久様が教えて下さる、けして裏切るでないぞ』
言い終わるか否や、封印の札を全て無効化にして開けると
まるで爆発が起きたかのように辺り一面真っ白になった
『この、力は・・・』
『昭久様、名を』
「汝に名を与える。天狗の・・・長の子よ。其方は『鴉』俺に付いて来い」
『バレていたか』
「雰囲気でバレバレだって」
わしゃわしゃと長に撫でられて
『本当に、貴方には敵いませんな・・・』
愚息を宜しく頼みます、と頭を下げた長を見て、鴉と名付けた兄ちゃんはぽかんと
『・・・父?』
『お前を封印した者でもある。いいか鴉。昭久様を絶対に裏切るでないぞ』
長は自分のつけてた仮面を外し、鴉に顔を見せる
「俺は安倍昭久。よろしく、鴉」
『昭久様・・・何と礼を言ったら・・・』
「気にしない、はいこれ。首にかけて」
『水晶で出来た数珠ですか?』
「これで霊力、キャパオーバーに成らないし自我も保てるから」
ずっとこの社に一人ぼっちで寂しかったでしょ
今度から俺が居るから。
そう笑ったら、鴉の目からボロボロと涙が溢れ
『・・・は、い!一生お供致します』
ぎゅむと、傘をさしたままの俺に抱き付いて涙を流し続けた。
天狗:日本の民間信仰において伝承される神や妖怪ともいわれる伝説上の生き物。
一般的に山伏の服装で赤ら顔で鼻が高く、翼があり空中を飛翔するとされる。
俗に人を魔道に導く魔物とされ、外法様ともいう。また後白河天皇の異名でもあった。