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妖狐の灯火

第5章 番外編


天狗

俺が9つの時、その男は寂れた社の屋根に居た。
仮面をつけてて、真っ黒な長髪で

綺麗な兄ちゃんだなーと思って。無意識に社に歩いて入ってた。

ひょいと中を覗くと。これ封印の札か?
小さな社中に貼っていて一瞬寒気がした。

「なー、兄ちゃん。何でここに居るの?」

しかも雨の中、社の屋根に。

『君は、私が視えるのですか?』
「あれ、人じゃ無かったんだ」
『私は、1000年程ここに居ましたが・・・視えたのはキミだけですよ』

霊力がお強い陰陽師ですね、と悲しげに笑ってるのは気のせいだろうか。

「兄ちゃん何で封印されてんの?」
『分からないのです』
「へ?」
『ここ1000年の最初の記憶が曖昧で・・・』

仮面越しに見る、紅い目が揺らぐ

「兄ちゃん、すぐ来るから待ってて」
『え?』

陣を張って天狗の事なら天狗に聞けってね~と。その場で天狗の里に移動した。

『これは昭久様、急にどうされた?』
「ちょっと聞きたい事あって」

現、天狗の長に社の天狗の事を聞くと、顔つきが変わる

「あの兄ちゃん、何して封印されてんの?」

かなり厳重に封印施してるよね。

『・・・あの者は1000年前。大きすぎる霊力に自我を失い都を襲い、多数の犠牲者が出ました』
「だからあんなに札貼ってたんだ」
『昭久様、何卒あやつの事は忘れて下さい』
「何で?」
『また自我を失っては・・・この世の中。大惨事になりましょう』
「・・・俺が使役するって言ったら?」
『昭久様!?』
「あの兄ちゃん、何もかも忘れてたんだよ、放っておくなんてできないね。強い力は俺が抑えるからさ」
『本気なのですな?』
「勿論」

余裕の笑みで、ニイと笑うと長は溜め息を吐き。

『何を言うてもお聞きにならないでしょうな』
「俺だし」
『封印を解くのに昭久様に何かあっては原久様に顔向けできませぬ、私もお供しましょう』
「ん、ありがと!」

子供みたいな、我儘だけど。あの兄ちゃんの悲しい顔が
妙に離れなかったんだよ。

『キミは・・・!』
「また来るって言ったじゃん」
『そのお方は?』

天狗の長を見ても誰だか分かって無い様で。

『天狗の長をしてる村雲だ。此度、お前の封印を解きに参った』
『私の封印を解きに?』
『・・・昭久様の言う通り、何も覚えてないのだな』

長の顔が一瞬、悲しみに暮れる
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