第4章 アズカバンの囚人
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なんだっけ、こう言うシチュエーションに憧れた前世の頃が懐しい。ほら、よくあるやつ。
朝に微睡みながら台所から聞こえる包丁の野菜とか切る音に味噌汁の匂いと炊きたてのご飯で目が覚める。
可愛い奥さんのおはようって声で起きるのは男のロマンだよね。
「実際はオッサンな兄貴が薬草やナメクジ切り刻み鍋を煮立たせ、香る匂いは薬草だけど」
「起きたのか。何だ急に」
「すんごい変な夢見て微妙な気分になってるからそっとしておいて下さい…」
はー、ヤダヤダ。なんだって夢の中で出てきたナイスバディで小さくて可愛い筈の嫁の顔がセブだったんだよ。
おぞましい程の鳥肌が立って衝撃で起きるってどんだけだ。
ごろんと向いてた方向から反対の方に寝返りをうてば。頭に凄い衝撃。おま、リド!?俺の身を案じてベッド脇でうたた寝してたんだろうけど頭の位置が丁度良くて痛い。
リドも頭抱えて蹲ってるし、目覚めてから何なんだよもうとしか言えないんですがあああ!!!
「ほら、飲め」
「ヤダ」
どうやら俺の為に魔法薬を作ってたらしいけど。そんなドブ色の薬なんて俺は認めない!!!
良薬は口に苦し?ただ苦いなら飲むけど魔法薬はのどごしとか量とか色々問題なんだよ誰かカプセルを開発してくれ。それか錠剤にしないと飲まないぞ!?
背後からがしりとリドに拘束されてしまい、無理矢理飲まされる事になったけどこれ年始にもあったな!!同じ様な状況が!!
「リド手前ぇえええ」
『はいはい暴れない。昭久の妖力とか力が全体的に向上したお陰なのか、僕もなんか身体が軽いんだよね』
「そうか、だからこの怪力か!」
外見細っこいのに俺も振り解けない力を得やがった。いや、本気出せば良いけどそうしたら被害出るのこいつだし。
はぁ〜〜〜〜……と深い溜息を吐いきながら項垂れて。口直しに渡されたオレンジジュースを啜りながらカレンダーを見れば
修行開始からこんなに日数が経ってたのかと思わず遠い目になる。
「俺授業出てたよな…?」
『覚えてないの?あまりにも死相丸出しだったから皆心配してたけどね』
「授業になってた??」
『一応、そこは流石だと思った』
「さよか…」