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妖狐の灯火

第4章 アズカバンの囚人


08

昭久が倒れた。僕の目の前で。
眉間に皺も寄せずに死んだ様に倒れる昭久を見て
何かが切れる音がしたんだ。

吸魂鬼のせいでパキパキと音を立てて凍る窓ガラス
この程度の魔法生物のせいで昭久が負ける筈がない。
"俺"ですら昭久の幼少期に手も足も出なかったんだ

何か理由があった筈

吸魂鬼が何かを視せたのだと踏んで
コンパートメントのドアに手を掛ける吸魂鬼を睨み付け

『この落とし前は高くつくよ?"Expecto patronum"』

"僕"は昭久に出会って無きゃ消えてたかもしれない
日記から出て直ぐに昭久を殺そうとしてた僕を昭久は
家族になると言う理由で安倍のお父さん、お母さん達に

経験のした事も無い幸せを貰った。

列車に入り込んでた愚かな者を全て消し去ってから
奥の車列から走って来たのは

ルーピンとブラックか

『おい、リドか?!昭久はどうしっ・・・いてえよ!蹴るな!』
『静かにしてくんない?黒犬。昭久に何かあったらシバくかんね』
『昭久君に何かあったのかい?』

やかましいブラック家のバカを黙らせたあと出て来たのはルーピンか
こいつなら話を直ぐに理解してくれるはず。

『・・・リド?っわ』

ぐいっとルーピンの襟首を掴みコンパートメントの中を見せると
顔つきがぐっと変わる。そう、まるで安倍のお父さんみたいに

『シリウス、車掌室に行って状況報告して来て。梟便も忘れないで』
『わ、わかった』
『リド、中に入れてくれないか』
『うん』

ルーピンをコンパートメントに招き生徒に見えない様に魔法を掛け
彼は座席に座ったまま頭を窓に預け、気を失ってる昭久の脈を計り額に手を当て

『リド』

不意に声を掛けられて視線だけルーピンを見た

『彼がもし学校に着くまでに目を覚ましたらこのチョコを食べさせて。
もし目覚めなかったら入学式は欠席でセブルスに任せなきゃいけない』
『分かった、着くまでに起こす』
『ははっ、僕はシリウスと合流して昭久君の事を学校に伝えるから』

頼んだよ、と出て行くルーピンが視界から居なくなるのを確認してから
ぐったりと動かない昭久の向かいに座って。

『入学式楽しみにしてるって言ってたでしょ。寝てる暇は無いよ?昭久』

手を伸ばし、精神を集中させて
リドはゆっくり目を瞑った。
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