第3章 秘密の部屋
飛んで行くのは精神だけよん、と言ったらぎゅっと抱き着かれて。
「何だ?リド」
『鴉達は行くんでしょ?』
「まあな」
『・・・帰って来てよね』
「分かってるよ」
お前も随分素直になってきたな、とクスクスと笑ったら
むすっとした顔で睨まれて。
拳と拳をこつんと合わせて、セブには上手い事言っておいてくれな。
『は?セブに言ってないの?』
「うん、だからフォロー頼む」
『帰って来てシバかれても助けないからね』
憎まれ口を叩きながら、陣の中に入って
「行ってくる」
すっと眼を瞑り、精神を集中させるとそのまま意識が飲まれて行った。
「昭久は行ったか」
『お父さん?』
「何、大丈夫だ。彼奴ならちゃんと戻ってくる」
心配そうなリドの頭をぽんぽんと撫で。
深く眠っている昭久の側に座って、じっと昭久の顔を見詰める原久は
リドも見たことが無い、泣きそうな顔をして祈っていた。