第2章 Umbrella
「こちらF地区、ICE 。敵制圧しました」
天に届くのではと息を呑む程の氷壁を見つめ、私は無線にそう呟いた。数百メートルも離れたD地区であの氷壁を聳えたたせたのはきっと彼だろう。
「そちらに向かいます」
生まれながらの優等生と、泥に塗れて這い上がった劣等生。この差を縮めるのに数年かかった。縮んだ差なんて微々たるものだったが、それでもここまでやってきた事を自分で褒めてやりたい。
そんな事を考えながら、のびた敵を回収していると静かだった無線がザザザと音を立てた。
「D地区!こちらD地区!ショー…が!ショートが敵にっ…」
中継ヘリや救急車、街の喧騒に安っぽい無線の音が掻き消されてしまう。ただヒュッと私の喉の奥から変な音がした。それが合図になったのか、私は引きずっていた敵を乱暴に引渡し駆け出した。
「こちらICE 。すぐそっちに行きます」
最近の敵は闇雲に暴れ街を破壊する。平和の象徴オールマイトが引退し、エンデヴァーがNo.1の座に君臨してから更に。
瓦礫の山を跳ねるように走り、私はそのNo.1ヒーローエンデヴァーの息子の元へと急いだ。