第9章 Rewrite
異国の地に降り立って何処にいるかも分からない貴方を探す。
気が遠くなって目眩がするのは慣れない香りのせいだろう。
「本当に、良いのか?」
夏休みの最後、図書室で七色に光る髪を見て首筋に噛み付いた。
そして有無を言わさず手を引いて制服のまんま城に雪崩込む。
「野暮な事言わないで。もう私の気持ちなんて全部知ってる癖に」
あの夏の彼を見て、燃えた思い。
言葉で投げつけても、彼はひょいと躱す。まるで山で見せた姿のように。
「まぁ……否定はしねぇ、ショ」
ふかふかの絨毯にリボンを投げ捨てた。
真っ白なシャツに手を伸ばしボタンを外す。
たったそれだけの動作に胸が締め付けられてしまうのは、この秘め事が終わった後を想像して。
「初めてだから、優しくして、ね」
薄ら焼けた肌に生唾を飲んだ。白く透き通った胸板に、頬が無意識に染まる。
「ショ?…待て…おめェ本気か?」
シャツを剥ぎ取ろうとした手を掴み彼が問う。
丸く目を見開いて。
そして深く息を吐き、玉虫色を掻いた。
「帰るッショ」
ぎしりとベッドを鳴らして立ち上がる彼にどんな言葉をかければいいか、私には分からなかった。
ただ、ずっと燻り燃え始めた気持ちが涙に変わって、静かに泣いた。
「初めてとか、あのー、その、なんだ…大事にしろッショ…」
妙ちくりんな風貌の彼が、至極真っ当な事を言う。
私は心を彼に捧げる気でいた。彼はきっとひと夏の過ちとここに来た。
だから、何も言えなくて、細っこい彼の背中にしがみついたんだ。