第4章 Love Me Tender
「まいか…」
煌々と光る安物のシャンデリアを背負う切なげな彼。丸みを帯びた頬に手を当て彼を引き寄せた。
蕩け切った身体に彼の重みと熱を感じ、酔いを楽しむ。
「電気消さねぇの…」
「…っ、消さない、で…お願い…」
少年のように笑う彼が、堪らなく好きだ。
「まいかってば大胆」
本当の事を言えば、暗闇のまま彼を味わいたい。だけども安物の光を消してしまえば彼が、この事実が嘘になってしまいそうで怖いのだ。
「良い、から…もっと…」
私の言葉に気をよくしたのか、彼の律動は早くなる。
突かれる度、彼に惹かれ、抱き締められる度、涙が溢れる。
「おそ松くん」
その次に続く言葉をいつだって言えない。放出出来ずじまいの一言は彼と身体を重ねる度に体内に蓄積されていく。
私が彼の初めてを貰った筈なのに、どこか虚しくてシャワールームを見て静かに泣いた。
「まいか」
彼が大好きで、彼の全てが欲しいと願ったけれどただひとつ。きっとこの先奪えないのは彼の唇だ。
心はとうの昔に諦めていた。気ままな彼を縛り付けられるなんてハナから思ってはいない。
「気持ち良かった…?」
何度彼を受け入れようと、透けて見えぬ彼の心が憎い。
頬を寄せようと近付いて彼がひょいと身を躱す。
「しないって言ったろ」
額を柔く叩かれて拒まれた。
立派なベッドに横たわる彼に寄り添うように隣に丸まって私は問う。
「泊まってく…?」
一人で夜を明かすのが怖い。
彼と出会って、初めて知った感情。出来れば夜が明ける少し前。薄明るい朝、喧騒から隠れるように彼と街を歩きたい。
「いんや、帰る」
だけど、そんな些細な願いすら彼は突っぱねてしまう。