第2章 Umbrella
レポーターやカメラマン、野次馬にプロヒーロー。
街はびしょ濡れ。私は走り出す。救助班目掛けて。
「ショートっ…ショートは?」
彼を救助班へと運んだサイドキックを見つけて駆け寄ると、静かに首を振った。
ぐしゃり、膝から崩れ落ちてしまった。
守りたい、初めて見つける事が出来た、なりたいものになれなかった。
ヒーロースーツに落ちる涙を拭ってくれる人はどこにも居ない。
「おっ、ICE」
居ない。そう居ない。
「ショート?!」
包帯を左腕に巻き、私の前にしゃがみ込む彼に落ちる涙が引っ込んでしまった。
サイドキックに目をやると、笑いを堪えながら不自然に目を逸らされた。
「傷、は…?」
「引っかき傷だ。血だけ大袈裟に出てたんだ」
彼のヒーロースーツを掴み、私の口から転がり落ちた一言は短かった。
「良かった…」
静かに回された腕の温かさに胸が痛くなる。
どく、どく、規則的に私の耳に届く鼓動が愛おしくて涙が溢れた。
「なりたいもん、なれたか?」
「なれると思います…」
街は善と悪が隣り合わせ。
そんな日々の中で私達は生きている。
「まいか、準備出来たか」
その中で幸せを探し、見つけ、守る。それをこなす事はとても難しい。それでも、少しずつ、少しずつなりたい形に近づいて行きたいと願うのだ。
「はい、行けます」
「母さん、まいかに会うの楽しみだって言ってた」
その先に何があるのかなんて誰も知り得ない。でも私は彼が言った言葉を信じて彼を守り支えたいと思ってしまったのだ。
「雨降りそうだな。傘持ってくか」
「一本で大丈夫ですよ」
どうしようも無く寒い日は大切な人を凍えさせぬよう雨風から守り、堪らなく暑い日は陽射しを遮れるよう。私はそんなヒーローになりたい。