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【MHA】声を聞かせて

第1章 サヨナラ、引き篭もり生活


 目線を合わせないように、鏡に映る自分を見ないように俯いていると、あっという間にカットは終わり、床に転がる毛束の量に驚き鏡を見た。綺麗にスタイリングされた髪は、士傑に通っていた時と全く同じ髪型。笑顔でどうですか?と尋ねてくる美容師さんを押し退け、人使の元へ走った。


「(ねえ!なんでこの髪型なの!?)」
「あー、終わった?待ちくたびれたんだけど。」
「(ちょっと!私の質問に答えなさいよ!)」
「お姉さん、気に入らなかったかな…?カットやり直しましょうか?」
「大丈夫です。嬉しくて早く俺に見せたかったみたいなんで。ありがとうございました。」


 言いたい事は沢山あったが、筆談でしか自身の気持ちを伝える事の出来ない私。その文字を携帯に打つにも時間が掛かる。私の話を聞きたくない人使はサッと会計を済ませ、携帯を持った私の手を掴み足早に美容室を出た。


「俺は昔みたいに姉ちゃんと話がしたいだけだから。」


 少しだけ寂しそうな横顔に良心が痛む。


「取り敢えず明日はちゃんと面接受けて来てよね。ドタキャンとかしたら承知しないから。」


 憂いを帯びた表情から一変。冷ややかな瞳でそう言った人使。そんな人使の冷たい視線に負け、思わず頷いてしまった。面接なんて嫌だけど、会話もろくにできない私が採用になるわけない。面接を受けて落ちれば約束は守った事になる。親のスネをいつまでも齧ってる訳にはいかないけど、もう少しだけ居心地のいい我が家に篭っていたい。

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