第2章 ようこそ、ハイツアライアンスへ!
皆が学校に行っている間は本当に平和な時間だった。共有スペースの掃除を済ませ、ゴミ出しも終了。これで給料が貰えるなんて、そんないい話あっていいのだろうか。雄英の寮母として働く上での必須条件がヒーロー免許所持だから、これがまた給料が良かったりする。これならつい数日前まで引き篭もりだった私でもやって行けそうだと思っていた数時間前までの私を殴ってやりたい。
「それでね、今日から必殺技取得に向けて授業が始まったんだけど、面白くってさー!」
「ねえ!私も俄然燃えてきたよ!」
「琴葉ちゃんも高校生の時必殺技とか授業で作ったりしてた?」
授業が終わり、寮に帰ってきた芦戸さん、葉隠さんに捕まってしまい、逃げ出せずにいる。しかも、やたらと私がヒーロー科に通っていた高校時代の話を聞きたがるから困った。現在ヒーロー科に在籍しているのだから、身近にヒーロー免許所持者がいれば話を聞きたくなるのは当然だ。私だってあの頃はそうだったし。けど、今の私にとって高校時代の事は触れたくない過去であって、楽しく話せる話なんか何一つ無い。…そりゃあ、卒業間近まではそれなりに楽しく過ごしてたけど、やはり高校生の頃と言われ、真っ先に思い出すのは、あの事件の事。
「そういえばさ、琴葉ちゃんの個性も普通科の心操と同じ〝洗脳〟なの?」
「(概ね一緒だけど、私のは弟のとは少し違うかな。)」
「少し違うって言うのは?」
「(もうこの話はここまでにしよう?課題出てるでしょ?ちゃんとやらないと。)」
「えー!いいじゃん!超気になる!琴葉ちゃんの個性!」
きっと個性の事を話せば、どうして話せないのだとかそういう話になっちゃう。その理由は誰にも話したくない。けど、好奇心旺盛な女子高生二人を前に、話をはぐらかす方法を私は知らない。