第1章 幼少期
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「それがし、弁丸と申す!宜しくお頼み申す!」
「市って言うの、よろしくね」
目の前の元気な子がにぱっと人懐こい顔で笑う
佐助はその隣で、表情は・・・気まずそうに私を見る
昨日うちの保護者に、本当に何されたの?
「弁丸、市姫が滞在の間、失礼の無い様にな?」
「はい!父上」
「いい子にしてたら仁助にお八つを持たせる、弁丸」
「あにうえ!本当でござるか」
昌幸様と信之様はそう言い、弁丸と・・・私の頭を撫でて退室されてった。
私ってやっぱ子供なのね・・・よく撫でられます本当
弁丸はちらりと私の後ろに居る黒羽と雹牙を見て
「そちらのお二方はお市どのの忍で?」
「うん、市の大切な、家族の黒羽と雹牙よ」
「そうなのでござるか!素晴らしい家族でござる」
家族、という単語に佐助は驚いた様にこちらを見てきたので
にーっこり笑ったら青褪めてばっと目を逸らされた。
「黒羽殿と雹牙殿は、お市殿の兄上の様なのでござるな!」
「そう言う事になりますね、弁丸殿」
「たまに阿呆な事をするからな、突っ込まんと暴走するぞお市様は」
「素晴らしき事でござる!」
「あんた達それ本気で言ってるの?」
黒羽と雹牙の言葉に思わず声を上げた佐助の頬に何かが掠った
・・・黒羽の暗器だ・・・。
黒羽、弁丸の死角に暗器飛ばすとか最近黒くないかい?伊達での件で開き直った?
いそいそと佐助の反対側の、弁丸の隣に座って3人が見えない方向を向かせる
これは口論になりそうだ。
『昨夜さんざ言いましたよね?』
『貴様のその無い脳みそでも理解できなかったか?』
『だって俺達は忍だよ!?草が姫の躾って何考えて・・・っ!』
「弁丸、佐助は弁丸の家族?」
私の言葉に、読唇術で会話してた佐助の言葉が止まる
「うむ、それがしは、そう成りたいと思ってるでござる!」
うんうん、純粋な弁丸の気持ちの意味はまだ佐助には理解できないのかな
家族を大切にする主は良いって黒羽が褒めてくれた事があるのだよ。
なんで、って口だけ動かす佐助に。
『家族って、そういうモノなのよ?』
「?」
弁丸はまだ読唇術できないのかな、きょとんとした顔可愛いです