第5章 忍物語
丹波様は若様と親交が深かった為に、私達は若様の手足となって……
「その命が下ったのは三日前だ。お前は妹姫様が殿に暗殺されぬ様に見張ってた筈だ」
「そ…うでした。小さな、でも可愛らしいお方でした」
確か闇の婆娑羅が確認されてから幽閉されていて、信長様が妹姫様を救うべく私達も動いていたのですが。
記憶が曖昧で何が起きたのか分からない。話し相手も居らずずっと座敷牢のような暗い部屋で遠くを見詰める姫様の姿を
死に行く母や理兵衛様を重ねてしまったのろうと推測するしかない。
一瞬だけ弱った隙に飲まれたのだと雹牙に言われ、姫様は無事かと問えば
言動が怪しくなり始めたのに気付き、如何したのかと外に連れ出した時にはもう正気では無かったらしい。
「良かった…雹牙を殺さなくて」
「誰と一緒に修行してきたと思っている。信長様も心配されていたぞ」
「あの方も、闇の婆娑羅でしたね」
だから同じ属性である妹姫様を救いたいと仰った時に私達は賛同し自ら信長様の下に着いたのでした。
今まで暴走した事が無かった故に、つもりに積もったのだろうと言われて納得した。溜め込むのは良くありませんね…
「明日だ」
「分かりました」
殿を信長様が手を掛けるのと同時に、家臣共が大人しく信長様に付くように手を回す。抵抗すれば牢に…
その後で何故か信長様と共に妹姫様をお迎えに行く手筈となっていて
何故私達も同席されるのか首を傾げたままでしたが
まさか生涯忠誠を誓ったり……その方が私達の心の闇を祓って下るのだと。その時は思いもしなかったのですが。