第1章 幼少期
昌幸殿と信之殿に話を聞きたいと言われ、姫様を雹牙に任せ残ったはいいのですが
輝宗殿は何をお聞きになられたいのやら
「仁助も来い」
初めから、天井裏に居る忍の名・・・真田で仁助と言ったら甲賀の猿飛仁助ですか。
婆娑羅者では無いですが諜報において腕の良い忍と情報を掴んでる
「はいはい、ご用ですか?」
「貴方は甲賀の猿飛仁助ですか」
「流石、伊賀の"漆黒の翼"とさっきの"血濡れの氷"俺の情報も筒抜けだね」
「私と雹牙をその二つ名で呼ばないで頂きたい、忌々しい鬼子の象徴みたいなモノなので」
「え、格好いいのに。もしかしたら主にも言ってないわけ?」
「姫様に言ったら貴方でも殺しますよ」
この壮年の男は、飄々とした態度で胸糞が悪くなる所ばかり突いてきますね
私達の言い合いを唖然と見ていた昌幸殿が咳払いをして此方に注意を向ける
「あ・・・申し訳ありません」
「いやいい。仁助言い過ぎだ」
「ふっ、二人とも市姫を大切にしているのだな」
信之殿の言葉に少しむず痒くなる。姫様は、私達を理解して下さったうえに受け入れて下さった。
とてもお優しい方ですから・・・
「話は戻すが」
「はっ」
「輝宗達が命の危機に陥った処を救ってくれた様だな」
輝宗殿・・・その文やはりその件についてでしたか。
「市姫も負傷したと書いてあったが、今は容体は?」
「血が抜け過ぎたのか、7日ほど意識を失って居られましたが、今は恐らく元気のご様子です」
「恐らく、とは。どう言う事で?」
「姫様はお辛い時、顔に・・・出しません、付の私達にですら」
「そうか、市姫は其方達に心配を掛けぬ様に。幼いのに聡く、そして優しいな」
本当はもっと感情を表現して頂きたいと思うのは
我等、草の身で心配するのは畏れ多い事なのだろうか。
「貴殿は、もう草ではないだろう?」
信之殿の言葉に顔を上げる、顔に出てしまって居ただろうか。
「市姫は"家族"と言っていたのだから、胸を張って兄として接すれば良いのだ」
「そうそう、うちなんか忍なのに草って言うと凄く怒られるんだよ?」
「仁助も来たばかりの頃は堅物でなあ」
「ちょ、昌幸様バラすの止めて下さい」
嗚呼、この男もそうであったのか。
姫様が私達を家族と言う様に、この方々も同じ事を仰られているのですね。