第1章 幼少期
「姫様」
「ん?」
「私が、恐ろしくないのですか?」
真剣に、少し悲し気に目を反らして。
此れはあれかな?畠山襲撃の時の黒羽の裏の顔の事の事ですよね。
「私は、今まで姫様に裏の、忍の顔を見せていきませんでした。
先日は怒りの余りに思わず・・・」
そこで言葉が途切れ、歯を食いしばり黒羽の綺麗なお顔の眉間に皺が。
「黒羽は、黒羽、よ?」
拒絶されるだろうと思っていたのか、私の顔を見る瞳が揺れている
「いい?雹牙も、黒羽も、市の大切な人、家族」
「姫様・・・」
「表も、裏も、大好きな、黒羽だから、安心してね」
「っ!ありがとう、ございます!」
大丈夫よ、お兄ちゃん達にはいつも救われてるもの。
もし害を与え様とする馬鹿が出たら直々に葬ってあげるから
2人とも、自由に生きて欲しいの。
「市姫は優しいな」
「やっばり、いらっしゃった、のね。輝宗様」
「気付かれてたか」
いやあ、これでも雹牙の気配も黒羽の気配も区別出来るくらい上達したからね?
輝宗様ってば何気に小走りで来たからよく解った
起きようとしたんだけど輝宗様に手で制された
布団の上に横になったままで申し訳ないです。
「市姫、ありがとう。2人から聞いた・・・畠山の不審な動きを察していたのだな」
「でも、市のせいで」
「否、市姫が来たから早く捕らえる事ができた。市姫が来なければ俺か子供達か、誰かが犠牲になってたかも知れない」
だから気に病むなと撫でてくれる輝宗様の言葉が
優しさが心に染み渡る。
お優しい、この方の危機が減ったのならば
私は、来た意味が有ったのかもしれない。
「ありが、とう、ございます」
ここの世は、何でこんなにも皆優しいんだろう