第1章 幼少期
あれ?いつもは私が突撃して居座るのに今日はどうしたのかなと小首を傾げつつ
兄さまの所に行きましたら・・・
「市ぃ・・・貴様に忍の付き人をつける」
「え?」
今何て言ったのかしら兄さま。付き人?つまり子守り?
もしかして通い過ぎて邪魔になってて仕事が進まないとか?
うわ、ありえる。どうしよう・・・兄さまに嫌われたら私どうなるんだろう
「戯け、話は最後まで聞けぃ」
うあ!?顔に出てた?
「あ・・・ごめんなさい」
思わず不安顔になるくらい動揺してたみたいです
兄さま曰く、水車や乳牛・鶏の改良・・・言わば食の改良
南蛮の貿易品等に陰ながらも貢献している私に何の警護も付けなくていいものかと思案していたそうな。
これ、多分過去に敵の忍に襲われた事も心配の一部に入ってるよね。
「それと市・・・何が貴様を惑わせている」
ビクリ
思わず体が強張った
「兄に言えぬ事か?」
違う、違うの 兄さまには知って欲しいの。
「ちがうの」
でも、異質な私が拒絶されたらと思うと苦しくて仕方がないのです。
「覚悟が、決まったら、必ず言うから」
だから少しだけ時間をください― と言葉を紡ごうとしたら不意に頭を撫でられた。
「急かしてはいない、だから待つ」
「ありがとう、にいさま」
もう少しだけ、この優しい掌に甘えさせて下さい・・・