第1章 幼少期
「フン、黒羽よここに参れ。市に挨拶せよ」
兄さまが天井をチラリと見たあと声を上げ、シュタっと目の前に忍と思わしき人物が降りて来た。
「黒羽と申します」
私の目の前で平伏する忍・・・長い黒髪の綺麗な顔のお兄さんが1人。
「信長様より今日付けでお市様の護衛にと言付かっております」
ああ、この忍さんが兄さまの言ってた護衛の方なのね。
「黒羽さん「呼び捨てで結構でございます」・・・黒羽?お願い、聞いてくれる?」
「はい、何なりと」
この時代、忍というのはそこらに生えてる草と同等の扱いであって
例えば、主に死ねと言われたら死ぬ。そんな事は私は認めない。
「黒羽・・・護衛だからって、市より先に、死なないでね?」
「は?」
素っ頓狂な声を出された。
すぐに失礼な態度を取ってしまったと思ったのかすぐに平伏しそうになるのをとめる。
兄さまは私たちのやり取りを面白そうに眺めてるけど・・・
「黒羽は、今日から、私の家族になるの」
できればあんまり恐縮しないで、自然体で接してくれると嬉しいなーなんて言ったら
黒羽は困った様に、動揺を隠せないまま兄さまの方を見た。
「市の好きにさせい」
面白い、とニイと笑いながら兄さまはそう言って・・・
「すぐには・・・自然体にとはなりませぬが。承知しました」
「ありがとう・・・黒羽」
お兄さんがまた一人、家族として増えました。
できれば・・・兄さまと黒羽には前世の話を聞いて貰いたいなって
悩みを打ち明けれる間柄になりたいなって、そう思ったの。