第5章 忍物語
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女は自分の産み落としたモノに目を見開き。悲鳴を上げた。
父親は直ぐに取り上げクナイで我が子の命を刈った。様に見せかけた。
「まあ、子にゃ罪は無いからな」
子は真っ白な産毛を風に靡かせて、ちらりと見える真紅の眼で。何となく笑った気がして。
「名前、うーん。名前か」
横に控える様に忍が現れた。発狂した女が自害したのだと言う。
互いの利害の一致、後継者を作る為の僅かな情で一夜を共にした相手だ。
男の興味は女よりも腕の中の子が愛しい。
コツン
小さく白い塊が顔に当たって、周囲を見渡し己が子を見ると
子の周りにだけ冷気が集まっていた。
これは、素晴らしい。
「お前は氷の婆娑羅者かぁ」
氷、氷、何か良い名は無いか。
真白な雪の様に白い髪、雪、氷、雹、うーん
父親の白く長い髪を一房握って、むにゃむにゃと眠りそうになる息子
「雹と牙で雹牙は…ありきたりか?強そうだろう?
この百地丹波の息子として、強い忍になっていくのだぞ」
くあぁっと、小さな欠伸が返事をしたような気がした。
雹牙の父、三太夫こと丹波しか知らないちょっとした話。
真っ赤な顔で、手で顔を覆うは百地雹牙
背中にはここ安土城の姫がくっ付き目を輝かせた。
「おおー、雹牙にまさかの新事実」
「ああ、そうだったんですね。大体予想は出来てましたが流石長」
「んで、長になっちまったしお前達が15になるまで、大っぴらに庇えなくてな」
「おっま、本当に勘弁してくれ…」
「まあそう照れるな息子」
「照れてない!」
あ、お八つ取って来なきゃ
ふと立ち上がった市の重みも取れ、親子でギャーギャー言い合えば
黒羽に暗器でその場に縫い付けられて目を白黒させた
「は?あ、黒羽?」
「雹牙、今日は何の日ですか?」
姫様が小さい身体で頑張って作ってましたよ
「良い主だよなあ、市姫」
「そりゃどーもー」
「おっと、半分持ちますぜ」
茶を並べ、出来上がったケーキの上に蝋燭を立てられて頭を抱える
「雹牙誕生日ですよ?」
「せめて丹波を除け!頼むから」
市を膝抱っこして顔を埋めたまま、育った雹牙は大きく吠えた。