第5章 忍物語
04
からり、と小石が手元から足元に転がり落ちる。
簡単な使いを頼まれた筈だったのだが、帰りに敵襲に遭い足を滑らせ崖へと転落した。
何とか片手で掴んだと思ったが。
さて、どうやって上がろうか。
断崖絶壁、崖下は荒波。手を離したら荒れ狂う海。
よっと、崖を少しよじ登れば上には複数の気配を感じて。恐らくここに己が居ると思われてないかもしれない。
下手に上がっても不意を突かれ攻撃されるか
「…」
以前なら…姫様に仕える前までの自分だったら少しの傷でもどうって事なかったのに
あの方は、少しの怪我でも自分の事の様に、泣きそうになって手当てをして下さる。
けして泣かせたい訳ではないのに…。
とにかく、足場が安定してる場所に出なければ
このまま死んでしまったら雹牙にアホの様に笑われてしまう事必須。
くそう、柄じゃないけど無性に殴りたくなってきた。
ずっと崖にくっ付いてても仕方がない、いつでも婆娑羅を発動出来るよう集中したまま駆け上がった。
「居たぞ!」
「しつこいですね、あなた方は!」
数は5~6、尾張の友好国では見られない忍装束。1~2人捕まえて吐かせる必要がありますね
闇の婆娑羅で3名捕え、残りの3名を力任せに手刀を食らわせて黙らす
「!」
背後に気配を感じ振り向けば、しまった。7人目が居た。
手で持ったクナイで何とか攻撃を弾いたが、2撃目に備え構えると正面の男は急に
力を無くして倒れ込んだ?
「(無事か)」
「小太郎でしたか」
手助けしてくれた者の正体に安堵した。
風魔小太郎は姫様の善き友人の忍
柄にもなく私が追い詰められてるのをたまたま見かけたそうで。
「いやはや、お恥ずかしい」
「(怪我は?してないな)」
「あ、平気です。婆娑羅で回復させてもらいましたので」
婆娑羅で捕えた忍をぶら下げてそう笑えば。彼はふう、と息を吐いて
「(市に用事がある。黒羽、1人持つ)」
「ありがとうございます」
必要の無い忍は崖から落とし、帰ったら尋問がありますね。
拘束した忍を抱えて、2人で尾張に向かった。