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闇に咲く華

第4章 番外編


3周年ありがとう企画:市【幼児化】

ひっ ひっく ぐすっ…

子供の泣き声が聞こえる。
姫様の部屋近くに子供が近寄れる場はあっただろうか?不思議に思って姫様の部屋の前、庭に降り立ち耳をすませば。聞こえる泣き声は姫様の私室の中からだった。
ゆっくり、襖を少し開いて驚いた。闇の婆娑羅が禍々しく隙間から漏れている

「姫様…?」
「っ、だあれ?」
「!そのお姿は」

姫様の寝ていた筈の場所に、姫様の面影が残る小さな少女が目に涙を浮かべて震えていた。


どう言う事だろう、姫様の身体が5つくらいの姿になったのはいいが私達の事、更に兄上であられる信長公の記憶も無い。
雹牙も昴も、報告をしてから姫様の部屋に来て下さった信長公も首を傾げる。

「お市様」
「…おいち?」
「名前も分からんか」
「っ、ごめんなさい」
「雹牙、少し落ち着きなさい」

泣き止んで下さったものの依然私達の事は分からない様で、不安そうに此方を様子見ている。信長公の方へ視線を移すと公の唇が動き、ある推測が紡ぎ出された。

『生前の頃の幼い記憶しか無いのではないか』

ああ、お市様になる前の記憶。しかも幼い頃の。絶望的じゃありませんか!!

「ええと…、"――"さま?」

姫様に教えて貰っていた"生前の名前"を紡ぐと、ぱっと顔を上げる様子に推測が確信に変わる。

「わたしのこと、しってるの?」
「ええ、貴女は覚えてらっしゃらない様ですが、よくご存じです」
「パパと、お姉ちゃんは?お兄ちゃんは?ど、こ?」
「ええと…」

世界が違うなんて口が裂けても言えません。我等忍は子供の扱いに酷く不慣れだ。
徐に、信長公が姫様の名を呼び抱き上げて膝の上に乗せると頭を撫でてから背中を叩く
急な用事ができたから、直ぐ迎えに来るから、それまで己が兄代わりだと
信長公のにこりと優しく微笑んだお姿を初めて目にした瞬間でもあり…心から姫様を心配なさる兄の顔をされていました。

すやすやと、信長公の胸に引っ付いて眠る姫様の頭を撫でて、どうしようかと頭を抱える。

「雹牙、昴、姫様の生前のお話は聞かれた事ありますか?」
「黒猫を飼ってた、くらいしか聞いてませんねー」
「それと死因か、家族の事は話したがらなかったな」
「「「はぁ…」」」
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