第4章 番外編
ザリっと、土を踏みつける音が聞こえた。
何だと外を見れば、村に入ったばかりなのか武士風の若い男が周囲を見回して入って来る。
「部外者か」
「あ~、人が居ないから入ってきちゃったかな、今まで忍の方が対応してたの?」
「その筈だが」
誰か居ないか、そう声を上げる男性の元に出ていけば、此方をみた男性はホッとした顔で、笑った。
「お市様!!」
「え、ひゃっ!?」
お市様の身体が宙に浮いたものの、婆娑羅で咄嗟に自分を掴み降りたのを確認しながら持ってた苦無を投げつけると目の前に居た男の姿はかき消え気配すら感じ取れなくなった。
「ふむ、連日忍達が居たのに、急に消えたのは尾張の姫が来ていたからか」
「な、お市様!」
「成程きみの主か、目が赤い故同胞だと思ったが違うのだな」
お市様の背後に回った武士の男は、朗らかに微笑みながらお市様の頭を撫でる。その男の瞳は紅いが髪は黒い。若い武士の様な出で立ちだが違和感がある。
「貴方がこの村の人間を殺したの?」
恐れず、異形の男に問うお市様の声が響く。我に返ってお市様に手を伸ばすと、男はゆっくりとお市様の背を押す。
「私が来た時にはもう食い荒らされていた、異国の吸血鬼は節操が無くて困る。ここに居た者の心臓に杭を打った、もうこれ以上の被害は無いだろう」
「お前はここに居た者とは違うのか?」
若い武士は、問われた言葉にきょとんとした顔で、微笑む
「半端な者程生き血を欲します、私は、このような物から命を貰ってるので」
そう言いながら、足元に咲いてた小さな花を手に取ると生を吸われているのかみるみる枯れていく。
「今回のこの村で起きた事を止められなかったのは、私に非がある。だが死者は戻らない」
「あ、今日」
「君は分かったみたいだね」
「今日ほど異界とこの世が強く繋がる日は無い、だからこそ、あれは此処に来たんだ」
ハロウィンとはそういうものだ、そう言いつつ。男は光の粒子に包まれ消えて行った。