第4章 番外編
2017ハロウィン:お市
カリカリカリ…カリカリ…
カリカリカリ…カリカリ…
真夜中、ふと意識が浮上し身体を起こす。ふああと軽く欠伸をかいて、何でこんな時間に目が覚めたんだろうとぼんやり天井を見る。
寝直す前に、少し水でも飲もうかと布団を横に置いた時に
カリカリと小さく、何かを引っかく音に意識が向いた。
何だろう、鼠か猫か。
珍しくない音に首を傾げたけど、小さい音だしまあいいやと厨に向かって、井戸水をくみ上げる。
こくりと冷たい水が喉を通って、気分が少し落ち着いたかな。少し伸びをしながら自室に戻ろうと踵を返した時に。ポチャン、と井戸の中に何かが落ちる音を聞いて顔を顰めた
「中?」
何か入るのいいけど、毒の類じゃないよね。この時代敵の忍が毒を入れるなんざザラにあるのだから。
朝一番に点検するのは黒羽と雹牙だけれども、今何か入ったのに立ち会った私がこのまま寝れる訳にもいかず。
井戸の方へ再び足を向けて、火を近づけてみるけど暗闇で水が見えないや
試しに水を汲んでみるけど特に変化はー…ん?
小さな、白い欠片みたいなのが沈んでいて、なにかと掬いあげてみた。白い、殻じゃないし
裏面を見るとほんのり赤いものが付着している。卵の殻でもないし
ゆっくり、空いてる手を近づけて、己の指に重ねてみて分かった
「血の付いた爪?」
何でまた。どこから入ったんだこの爪。
ご丁寧に切った爪の欠片じゃなくて、まるで拷問で剥がされたかのような爪の大きさに、付着してる血痕。嫌がらせにしても井戸に入れるか普通。
ザアッと、突風が吹き、袖で顔を覆う。季節はもう直ぐ寒くなる時期で。
爪を片付けて寝てしまおうと再び水の中を見ると。先程まで存在を主張していた生爪はどこを探しても見当たらなかった。
ちくりと、背中の皮膚が傷んだ気がした。